日本の静けさの真髄

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マイケル・トバイアス

富士宣言を読み、子どもの頃に北斎の「富士と笛吹童図」(枝の上に座った少年が、富士山に向かって一人笛を吹いている画)を見た時のことを思い出し、涙がこぼれました。山岳に宿る精霊は、神道、修験道の山伏、仏教徒、キリスト教徒、ユダヤ教徒だけではなく、あらゆる宗教の人々に崇められています。自然だけが、私たちの喜び、健康、活力、発想、夢、糧、水、空気、そして地球という名の偉大な神秘の本源であるということを思い出させてくれます。

富士山は悲劇も数々見てきた山です。航空機墜落、人間同士の衝突、そして今は気象変動が水源を脅かした結果生ずる、季節外れの大量の融雪。これらはどれも人間の生活が壊れやすいことをはっきりと示しています。

富士宣言は希望を生み出します。我々一人一人が驚くほど似ているということを強く思い出させます。我々は単独ではなく、群集でありながらもオーケストラを構成し、同じ旋律を唱っているということを思い出させてくれるのです。愛と平和の心に溢れ、尊厳を持ち出来る限り輝かしく生きるという唯一ともいうべき目的を、皆が共有していることを思い出させてくれるのです。

日本で天皇と縁故のある藤原貴族たちが、すべての罪人を赦し、生き物に害を与えることを禁じ平和な治世を生み出したことは、有史以来例のないことです。

日本人の大自然に対する美的洞察力を見ると、人間が最も深遠なるもの、最も甘美なるもの、限りなく心酔わせるものを愛しつつも、同時に節度を保つことの出来る存在であることが分かります。初めて痛みを減らす麻酔や郵便切手を発明したのは日本人です。おかしな取り合わせのようですが、これは暴力ではなく愛を与え、他とのコミュニケーションを図ることを重んじる日本の文化の特徴を示しています。

更に日本では、徳川時代でも200年以上にわたり、あらゆる銃器が規制の対象とされていました。何千年もの日本の歴史から数例を取り挙げましたが、それらはいずれも、少年の頃に体験したあの静謐なる瞬間に結びつき、世界で最も聖なる山の一つである富士山の頂きを、いつも登る樹上から臨み、人生を夢見ている少年の絵を思い出させるのです。

この素晴らしい富士宣言の、静けさの真髄に身を委ねましょう。耳を澄ませば、このような静謐さが世界を変え、弱体化した我々を新しい人類へと変容させ、生きとし生けるものとの調和を生み出すことが分かります。

日本、特に富士山は、人類が進化の重大な岐路に立つ今、万人が共感できる普遍的かつ重要なメッセージを発信する場として、誠に相応しい所であります。


By: Michael Tobias
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