富士宣言発足記念 東京シンポジウム開催
富士宣言事務局:
5月15日、「『富士宣言』発足記念東京シンポジウム」が、五井平和財団主催で東京の国連大学で開催された。さまざまな分野・文化・世代から、富士宣言の理念・価値観に賛同し、人間の本質である「神聖なる精神」をそれぞれの形で表現している、世界各地の50名のリーダーたちが参加した。 出席者たちは互いの先進的な考え方、開拓してきた多様な道などから、学び合い洞察を深め合い、人類が目指すべき富士宣言実現のためのポジティブな未来のビジョンを共創した。
午前10時、共同発起人3名の挨拶が、五井平和財団理事長西園寺裕夫、同会長西園寺昌美、ブダペストクラブ創設者アーヴィン・ラズロ博士の順で行われ、シンポジウムはスタートした。
西園寺理事長は、新しい文明の構築について、「技術論、方法論も大事だが、それだけで成し得るものではなく、人類の意識改革が大前提であり、その要諦となるべき重要な意識・価値観が富士宣言に込められている。富士宣言の理念に沿った生き方をする人々の数が増え、それがクリティカルマス(臨界質量)に達することが出来れば、人類はより調和のとれた、新しい文明を創造する道を歩むことになろう」と語った。
西園寺昌美会長は、参加者への挨拶の後、「人類は今、大きな一歩を踏み出そうとしており、一人一人が進化と自己創造に向かっている。富士宣言は、人類の意識の急速な変容を促進すると共に、一人一人が調和へと向かう、宇宙の法則に沿った生き方をすることにより、今日の混沌とした世界を共に乗り越えていけるよう、我々の後押しをする」と述べた。
アーヴィン・ラズロ博士は、マックス・プランクの量子論の理論を紹介しつつ、科学的見地から富士宣言について、次のように語った。「万物は〈同相〉の振動で構成されており、一体となって機能し、生命を生み出すコヒーレント(統制のある)なシステムである。同様に一つのコミュニティの中でも、コヒーレンス(統一性)ができるにつれ、そのコミュニティは一つのものとして振動し、多様性を持ちながらも統一性が発現してくる。宇宙を創造しているのは、神聖なる意識であり、そこにある一体感こそ、現実の世界の最大の本質である生命の鼓動である。その神聖なる意識は、私たちの中だけに存在するものではなく、それが私たちそのものであるのだ。富士宣言が訴えるのは、まさにこのことである」
◆導入プレゼンテーション
富士宣言の意義が発起人より改めて語られ、会場全体にその重要性が再認識されたところで、プログラムは次のグループディスカッションへと進行した。ここでは、参加者全員がそれぞれの英知やストーリーを持ち寄り共有することで、集合的なインスピレーションを生み出すことが目的とされる。会場を移し、数名の小グループに分かれて行われた。
グループでの理解や共感が深まったところで、再びホールへ会場を移し、富士宣言が提起する問いや自分の人生をつくる原点となった使命について、5名の参加者が発表した。このプレゼンテーションから、富士宣言が投げかける、生命への根本的な問いを全員で考察した。
5名のプレゼンテーション要旨:
デュエイン・エルジン(作家):自発的簡素こそが、地球上でより豊かに暮らすための確かな道の一つである。グローバルブレイン(人類全体の集合意識)が目覚めようとする現在、そこに至るストーリーを示し、人々の神聖なる精神が再認識されるよう、マスメディアに働きかける必要がある。
ニーナ・マイヤーホフ(教育者):自分にとって「世界中の子どもたちは、どうすれば互いに心を通わせられるのか。そのための教育とは何か」が、長年の問いであった。そのためにカリキュラムを作成し、それを若者とともに実践することをとおして、それまで生涯かけて追求して来たワンネスを体験できた。
村上和雄(遺伝子工学者):ゲノムというミクロの世界に、完璧な機能を果たす遺伝子暗号を書き込んだのは誰かと言えば、それは自然界、神の領域の成せる技としか言いようがない。自分は、生命界を調和の世界と捉えていて、そこは利己主義や利他主義のレベルを超えた世界であると言える。
パトリック D.コーデン(ビジネスコンサルタント):「神聖なる精神に触れるにはどうすればいいのか」、「人とのつながりから生まれる尊厳、信頼感、感謝を体験する機会が、恵まれた人々に限らず、あらゆる人々にもたらされるにはどうすべきか」 これらが、何よりも強く自らに問い続けている事柄である。
エリアーヌ・ウバリジョロ(分子遺伝学者):1994年、祖国ルワンダ大虐殺の体験を経て、人間、自然、そして地球を守る一助となることを人生の目標に定めた。生きとし生けるもの全てが繁栄する地球社会を築く夢は、世界の数十億人と共有できる夢だ。皆が一丸となって変革を成し遂げれば、人々の苦しみは変容し、平和が地球上に広がっていく。
◆分科会「変革の兆し・ビジョン・アクション」
午後からは、本格的なグループセッションが開始された。分野別に七つのグループに分かれ、各自が午前中の導入プレゼンテーションと同じ問いに対する自身のストーリーを披露した後、「富士宣言を現した新しい文明に向けて」というテーマで、三つの問いについて話し合った。
〈分野別グループ〉
1.経済・ビジネス 2.教育 3.環境・テクノロジー 4.メディア・文化 5.政治・ガバナンス・社会運動 6.科学・意識 7.スピリチュアリティ・宗教
〈三つの問い〉
1.その分野における、富士宣言の理念に合致するような変革の兆しとは。
2.その分野における、新しい方向性やビジョンとは。
3.その分野において、富士宣言の理念を実現させるためには、どのようなアクションや戦略が有効か。
ディスカッション終了後は、人間の意識を新たなパラダイム(規範・枠組み)へと向ける多彩なアイデアや取り組みが、それぞれのグループから提案された。
以下は、各分野の提案の一部である。
平和・愛・信頼・寛容・相互のつながりを第一に据え、現在のパラダイムを超越した人類の意識の進化に沿った経済。長期的視野に立つ新しい形の恊働を促進し、人類・コミュニティ・地球への貢献を目的に組織される経済モデル。
神聖なる精神を育み、生徒も教師も人間としての可能性を最大限に発揮できる教育。心と頭脳と行動を同等に重視し、人類に奉仕しうる世界市民を育てる教育。
・人間のホモ・サピエンス(知性)から、ホモ・ソシエンス(精神性)への漸進的な進化。
・あらゆる生命との具体的かつ思いやりあふれる関係の育成。
・大量の廃棄物は、再利用可能なエネルギーにリサイクルすべきという概念の普及。
・将来のチェンジメーカー養成のための、持続可能性の上に立つ構想教育。
・SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の発達によって、メディアは民主化され、多数の声が広く届けられる現状。
・良識あるメディアや地球的視野を持った報道の増加。
・情報通信技術によって、地球上のあらゆる場所で起こる重要な出来事を、世界市民として瞬時にキャッチすることが出来る現状。
・人類という家族にとって、より深遠な新しいストーリーが誕生しつつあること。富士宣言はその好例。
富士宣言を広め、他の組織や政府機関と協力して、人類全体の意識変革を図ること。そのために、次のことを実施する。《環境を大切にする/ボランティアセクターに働きかける/安全保障に関する意識を変える/コミュニティの信頼関係を構築する/未来への責任意識を育む/多様なネットワークを介して、全体に利する多様な解決策を生み出す》
・意識は、個々の脳を超えて世界全体に広がる場であり、脳はこの「意識場」の情報を受信または発信伝達するものである。
・さまざまな実験結果による、意識場の存在の示唆。
・意識を自然界の「情報」としてとらえる研究。
・意識が現実の世界におけるリアルな現象であることを、我々の知識体系と行動に取り入れる。
・宗教間の違いを超えた運動の誕生。
・スピリチュアリティと科学の融合の始まり。
・宗教界での女性の進出。
・個人の精神性の向上。
・さまざまな宗教における英知に対する、一般的な認知の向上。
最後に、全参加者がそれぞれコメントを述べた。どれもが富士宣言の本質が凝縮された、シンプルでありながら奥深く、希望と英知に満ちたコメントであった。
続く閉会の挨拶で、西園寺昌美会長は、「今日は感動的で特別な日であった。この場所に集い、人類のための神聖なる精神の復活に向けたムーブメントに参加下さったことに、心から感謝申し上げる」とお礼を述べた。
ラズロ博士は、このシンポジウムが完璧に調和され、非常に深い洞察に満ちたものであり、これまでに経験のない一日になったこと。富士宣言が、大きな変革の波紋を生み出す希望の一滴になり得ることを述べ、最後に「それができるかどうかは、我々にかかっているが、私はできると信じている」と結んだ。
西園寺裕夫理事長は、「富士宣言のイニシアティブは、始まったばかりであり、新しい文明の創造に向けて、皆さんと協働できることを心から嬉しく思う」と、参加者全員に感謝の意を表明し、シンポジウムは閉会した。
さらに詳細なレポートは、こちらのPDFにてご覧いただけます。
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