未来の世代へ宛てた手紙

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ソウル・オブ・ウィメンの発起人の一人であり、日本の女性リーダーの草分けである岩男壽美子様が、本年1月にご逝去されました。

心理学者、慶應義塾大学名誉教授、元男女参画審議会会長として活躍された岩男先生は、近年は(一社)キリマンジャロの会代表として、タンザニアに「さくら女子中学校」を開校し、その運営と教育支援に尽力しておられました。心からの哀悼の意と敬意を表するとともに、去る2017年5月、国連大学にて開催された富士宣言シンポジウム「調和とバランスのとれた世界を共創する」の中で、岩男先生が行われたスピーチを以下に掲載いたします。

岩男壽美子様スピーチ(原語は英語)

未来世代にどんなメッセージを残したいか。私が書いた手紙を読みたいと思います。その前に先ず、私が若いころに翻訳したカリール・ジブラーンの有名な書物「預言者(The Prophet)」の中で、子どもについての一説を書いていますので、それを思い起こしたいと思います。

「あなたはこの体に住まいを与えるがよい。だが、魂にまで住まいを与えることはできない。この魂は夢の中でも尋ねられない。明日の館に住んでいるものだから、あなたはわが子をあなたのようにしようと願ってはならない。あなたは弓、その弓は生きた矢として、あなたの子を放つ。射手は果てしなく行く手にある標的を見て、矢が早く遠くに飛ぶように力を込めて、弓のあなたを引き絞る。射手の手でしなうのを喜びとしなさい。あの方は飛び去る矢を愛するように、矢をつがえるしっかりした弓をも愛しているのだから。」

ここでバランスということがわかります。世代間のバランスです。社会の変化のペースはますます早くなっています。皆さんご存知の通りです。次世代は私たちの想像を超えた世界で生きていくことになります。ですから「弓」として、次のようなことを申し上げたいと思います。

第一に、どんなに目まぐるしく社会が変化しても、次の世代のあなたたちには、多様な人々の中で生を与えられた人間として、尊厳をもって他の人に尽くす人であってほしいと思います。社会がどれだけ変化しても、紛争や憎しみ、そして悲しみは常になくならないでしょう。心に傷を受けたら、同じような傷や痛みを他の人が受けないように力をつくしてください。

第二に、あなたたちに続く世代にとっての「弓」になれるように、基本的な知識とそれを多様な場面で使い生かせる力を養ってください。あなた方が身に付けてきた教育は、誰も奪い取ることはできないのです。私は未来の女性リーダーを育てていくために、タンザニアで女子中学校を開講しました。彼女たちが獲得した教育は、決して誰も奪い取ることができないからです。

三つ目として、毎日、毎分を大切に、宝物として生きてください。なぜなら、まったく警告なしに突然、時は終わりを告げるかもしれないからです。それでも調和やバランスを崩さないようにしなければなりません。私はまさにそのことを明確に理解しました。津波が6年半前に私たちが愛する大切な人々を奪った時です。このことを忘れることはできません。その日以来、私は今日できることは決して明日に延ばさない、今日中にやるということをモットーとしています。私はたまたま明日入院して、腰の手術を受けることになっています。何か借りたものはすべてきちんと返しておきたいと思います。もしくは、私がいなくても他の人にすべてがわかるようにしていきます。手術から元気に家に戻って来られなくても大丈夫なようにしていきます。

最後に、私のタンザニアの女子中学校の生徒たちのかわいい顔を思い描きながらお伝えしたいことがあります。私は彼女らに豊かなソーシャル・キャピタル(人間関係資本)を育んで社会に巣立って行ってほしいと願っています。そして人工知能や高度な情報技術が進む時代において、膨大な情報に流されることなく、必要な情報を取り出して賢い判断ができる知識と、人生に迷った時に、自分自身を導ける力や価値観を身に付けてほしいと思います。

By: The Fuji Declaration
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